不眠症

不眠症(睡眠障害)

不眠症(睡眠障害)

適切な睡眠時間は人によって違います。また、睡眠の質が悪ければ時間は十分でも心身に悪影響を及ぼします。
「なかなか眠れない」「すぐ目覚めてしまう」「何度も目覚めてしまう」「夜中や早朝に目覚めてそれから眠れない」「眠りが浅い」「起床時に疲労感がある」「昼間強い眠気に襲われる」など、睡眠障害は睡眠に関する幅広い症状を含んでいます。

睡眠障害はこころの病気の代表的な症状ですが、睡眠時無呼吸症候群やアレルギーなどさまざまな疾患が原因となって起こっているケースもよくあります。そして、疾患を原因としない独立した睡眠障害も増えています。現在は仕事などによって睡眠が不規則になりやすく、ライフスタイルの多様化によって睡眠に関するお悩みを持つ方が多くなっています。

心療内科・精神科では、生活や環境と睡眠について丁寧にお話をうかがって、睡眠障害に疾患が隠れていないかをまず確認します。原因疾患の症状として睡眠障害を起こしている場合、睡眠薬などの処方がかえって悪影響につながる可能性があるからです。たとえば、患者数が増加傾向にある睡眠時無呼吸症候群をはじめ、概日リズム睡眠障害、むずむず脚症候群などによる睡眠障害では、睡眠薬の処方は適していません。また、アレルギー性皮膚炎などによるかゆみで睡眠障害を起こしていることがあり、その場合にも皮膚症状を改善することが重要です。こうした原因疾患の有無をきちんと調べることで、適切な治療が可能になります。疾患が関与している場合にはその疾患の治療を中心に行いますが、原因疾患のない独立した睡眠障害の場合には、生活指導と薬物療法による治療を行います。当院では、生活指導と薬の処方内容や期間についてくわしくご説明し、ご相談しながら方針を決めて行うことを重視しています。

睡眠障害の症状が起きている急性期に薬物療法を使わないで治療するのはかなり難しく、ベンゾジアゼピン系の薬剤に対して弊害を心配される方もいらっしゃいますが、専門医が適切に薬物を使用することで高い効果を得られますし、問題も起こりにくいのです。重要なのは生活指導と薬物療法を併用することです。
実際に睡眠障害では、急性期に薬物療法だけを行うことで慢性の不眠につながってしまうことが少なくありません。また、慢性の睡眠障害にはインターネットやスマートフォン・アルコール・カフェインといった問題も大きく影響します。特に依存性や嗜癖性の高いものとして、SNSやネットゲーム、アルコール濃度の高いストロング系アルコール飲料、エナジードリンクをはじめとしたカフェインに注意が必要です。
そして、枕などの寝具やパジャマ、寝室の環境、運動不足といった生活を見直すことで睡眠の質向上につながることもよくあります。こうしたことから、睡眠障害の治療には生活指導も不可欠です。当院では患者様としっかりコミュニケーションをとって、専門医が適切な生活指導と薬物療法を行っています。カウンセリングなどもご希望があれば対応していますので、睡眠に関するお悩みがありましたらご相談ください。

不眠症の種類

寝付けない・短時間で目覚めてしまう・睡眠の質が悪いといった睡眠障害が慢性的に続く状態で、入眠障害、中途覚醒、熟眠障害、早朝覚醒の4タイプに分けられます。寝付きが悪い、なかなか眠れないのは入眠障害です。中途覚醒は睡眠途中で目が覚めてしまうタイプで、熟眠障害は熟睡感が乏しいタイプ、早朝覚醒は本来起きる時間よりも何時間も早く目覚めてしまうタイプです。
こうした症状が週に2回以上あって、1か月以上こうした状態が続き、日常生活への支障や苦痛がある場合に不眠症とされます。

不眠症の原因

不眠症の原因不眠症は、身体的・心理的・環境的な要因や生活習慣などが関与し、複数の要因によって生じているとされています。また、加齢によって長時間の睡眠や質の高い睡眠が難しくなりやすい傾向があります。ライフスタイル、生活リズム、ストレス、高齢化に加え、日々接する情報量が多すぎることが睡眠に影響するため不眠に悩む方は増加しており、日本では成人の約5人に1人が睡眠に関する問題を抱えているとされています。睡眠に問題があると心身に悪影響を及ぼしますし、疾患の症状によって睡眠障害を起こしていることも珍しくないため、眠りに関するお悩みがある場合には原因をしっかり確かめることが重要です。

入眠障害

寝付きが悪いタイプで、眠るまで2時間以上かかりますが、いったん眠ってしまうと朝までしっかり眠ることができます。不安やストレスなどによって生じることがよくあります。

中途覚醒

朝までに2回以上、目が覚めてしまう状態です。寝付きはいいのですが熟睡感がないことで生活に支障を及ぼしやすい傾向があります。

熟眠障害

眠りが浅くて睡眠時間が十分でも睡眠が不足し、熟睡感もありません。高齢者、繊細な方、神経質な方がなりやすい傾向があります。

早朝覚醒

寝付きは良いのですが、予定している起床時間より2時間以上前に目覚めてしまって、そのまま眠れない状態です。加齢やこころの病気によって生じているケースがよくあります。

原因

いくつもの要因が複雑に組み合わさって発症しているケースが多くなっています。

心理的要因

不安、イライラ、職場・学校・家庭などの人間関係など

身体的要因

ホルモンバランスの変化、頻尿、かゆみ、息苦しさなど
更年期障害、前立腺肥大、過活動膀胱、アトピー性皮膚炎、副鼻腔炎、睡眠時無呼吸症候群など

環境的要因

季節、引っ越し、転勤・転校、入学・入社・転職、家族構成などの変化

生活習慣的要因

アルコール、カフェイン、スマートフォン、運動不足など
ストロング系アルコール飲料、カフェインが多いエナジードリンクは慢性的な睡眠障害の大きな要因になっています。また、寝る直前までスマートフォンを使っていることで寝付きが悪くなる入眠障害も増加しています。他にも運動不足などの生活習慣なども睡眠障害につながることがあります。

不眠症の治療

生活指導と生活習慣・環境の改善、薬物療法を主に行っていきます。原因や要因を確かめ、特にお悩みの症状の解消を重視しながら、ライフスタイルなどに合わせた治療を行います。状態などにきめ細かく合わせた治療を行いますので、治療内容は患者様ごとにかなり違ってきます。

生活習慣の改善

健康に良い生活を送ることは、睡眠にも良い影響を与えます。体内時計の周期を整え、規則正しい生活を心がけましょう。

朝日を浴びる

朝日を浴びる朝日を浴びると体内時計がリセットされて、生活リズムが整います。体内時計は25時間周期ですから、リセットしないといつの間にかズレてしまうのです。就寝時間よりも起床時間を守るようにすることを重視して、毎朝少し早く起きて太陽光を浴びるようにしましょう。太陽光は強いので、曇りや雨の朝も外光を部屋に入れたら体内時計をリセットできます。また、就寝時には部屋を暗くして、起床時にカーテンを開けるというメリハリをつけるのも効果的です。

朝食

起きたら水を飲んで睡眠中に失われた水分を補給し、1時間以内に朝食をとってください。腸をはじめとした体のさまざまな機能を目覚めさせるためにも、朝食は欠かさずとりましょう。目覚めが良くなることで、良質の睡眠をとれるようになっていきます。

運動

できれば毎日、最低でも週に3回以上は30分以上の有酸素運動を行います。運動することで血行が改善しますし、習慣的な運動で筋肉が強化されると基礎代謝も上がり、良質な睡眠につながります。就寝前にはストレッチをして、筋肉をリラックスさせるのも有効です。

昼寝

昼寝不眠の場合、昼間強烈な眠気に襲われることがあります。15時までの時間帯で30分程度の昼寝であれば、夜の睡眠に影響を与えずにリフレッシュできます。眠気を無理して抑えるのではなく、時間を守って上手に昼寝をしてください。

入浴

入浴は血行を改善して体温を上げ、全身をリラックスさせるために役立ちます。できれば毎日、バスタブで芯まで温まるようにしてください。ただし、寝る直前に入浴するとかえって眠りにくくなることがありますので、就寝の3時間前くらいまでに入浴をすませておくことが理想です。

アルコールやカフェイン

アルコールやカフェインは睡眠障害の原因になっていることが少なくありません。ストロング系のアルコール飲料やエナジードリンクを習慣的に飲んでいる場合には、医師と相談しながら控えるようにしていきましょう。

スマートフォン

スマートフォン目に光が入ると睡眠に導くメラトニンというホルモンの分泌が減少してしまいます。画面が発光しているスマートフォンを就寝前にベッドで使っていると、メラトニンの分泌量が不足して睡眠障害を起こしやすくなります。パソコン・タブレット・スマートフォンの画面はかなり強い光を放っていますし、目から近い距離で使用しますので、良質な睡眠のためには就寝の2時間以上前に使用をやめることをおすすめしています。

眠くなってからベッドや布団に

眠くなる前に時間だからとベッドや布団に入ると、眠るまでに時間がかかります。それを繰り返していると、ベッドや布団に入ること自体に眠れないというイメージが強くなってしまいます。眠くなってから寝室へ行く、横になってみて眠くない場合はいったん起きるなどの工夫をしてください。

環境

枕や寝具、パジャマの肌触り、寝室の明るさ、湿度やハウスダスト、音といった環境も睡眠の質に関わっていることがあります。神経質になる必要はありませんが、気になることがあれば変えてみることもひとつの手です。

薬物療法

睡眠障害は生活習慣や環境の改善で良くなることもありますが、適切な薬物療法を同時に行うことでつらい症状を効果的に解消できるケースもあります。症状に合わせた薬剤を用いますが、作用時間が異なりますので不眠タイプによって適切な処方が変わってきます。また、原因疾患がある場合や不眠によって睡眠以外に症状を起こしている場合には、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、漢方薬などの処方が必要になることもあります。当院では、処方する薬の効果や起こる可能性のある副作用、服用に関する注意などをしっかりご説明し、ご納得いただいてから処方しています。お薬を服用する際には、医師から指示された用法や用量をしっかり守ってください。

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