パニック障害

パニック障害とは

パニック障害とは突然、強い不安感に襲われて、激しい動悸や頻脈、発汗、息苦しさを起こすパニック発作を生じる疾患です。パニック障害は、特定の条件だけでパニック発作を起こすケースと、人間関係やストレスなど複数の要因が関与してパニック発作を起こすケースに分けられます。また、女性は貧血なども発症につながることがありますので、専門医による丁寧な診察による診断が適切な治療につながります。
検査をしても器質的な問題はありませんが、脳の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの量やバランスの崩れなどによって不安を感じる神経の機能異常を起こして生じていると考えられています。パニック発作は本来であれば命の危険を感知した際に、それを回避するために起こる重要な反応です。恐怖や不安でその場を離れたいという強い気持ちを生じさせ、動きのポテンシャルを上げるために呼吸や脈拍も早くなります。パニック発作は危険がない状態で起こるため、支障が生じるのです。日本では、100人に1~2人程度が生涯を通じてパニック発作を起こすとされていいますので、発症頻度を考えると誰でも起こる可能性があります。

特定の条件だけで起こる場合には、抗うつ薬をはじめとした適切な薬物療法によって改善が可能であり、心理療法を併用することで減薬しながら安定した状態を目指すこともできます。

パニック障害の症状

突然、強い不安感に襲われて、激しい動悸、息苦しさ、頻脈、震え、発汗、めまい、ふらつきなどを起こし、10分から長くても1時間程度で治まります。ご本人にとっては「死ぬかもしれない」と感じるほど激しい症状が起こってコントロールできないため、再び発作が起こることへの強い恐怖感が生まれ、予期不安、広場恐怖、抑うつ状態を起こすことも珍しくありません。

パニック発作とパニック障害

パニック発作は、パニック障害ではなくても起こすことがあります。閉所恐怖症、高所恐怖症では苦手な場所にいることでパニック発作を起こすことがあります。パニック障害は特定の状況で発作を起こすのではなく、予期しない状況で突然パニック発作を起こします。

パニック障害の原因

パニック障害の原因はっきりとした原因はまだわかっていませんが、脳内の神経細部が情報を伝える際に働くセロトニンやノルアドレナリンの量やバランスが崩れるなどによって不安を感じる脳の機能に障害が起こって生じていると考えられています。パニック障害がある場合、大脳・大脳辺縁系・青斑核への変化が確認できます。思考や意思など高度な精神活動に関わる大脳は、セロトニンの分泌過剰によって回避行動を生じ、本能的な不安や興奮が生まれる大脳辺縁系にセロトニンが分泌異常によって漠然とした強い不安を生じると指摘されています。また、青斑核は、心臓や血管、汗腺の反応に関係する指令を出すため、誤った指令が出てしまうと危険がなくても動悸や汗、めまい、ふらつきなどを起こすとされています。こうした大脳・大脳辺縁系・青斑核に問題が生じてパニック発作を起こすと考えられています。
大脳・大脳辺縁系・青斑核意外にも、延髄や扁桃核の関与も指摘されています。延髄にある中枢化学受容器が二酸化炭素(CO2)の過剰を感知すると扁桃体に危険を伝え、扁桃体がセロトニンを抑制し、不安や恐怖への反応が鋭敏になってパニック発作を起こしやすくすると考えられています。

予後不安と広場恐怖

パニック発作は、本人にとって「死ぬかもしれない」と感じるほど激烈な症状を起こすため、また発作を起こすのではと強い不安を抱えてしまうことが多く、こうした状態は予後不安と呼ばれています。
広場恐怖は、広場が怖いという状態ではなく、発作が起こるかもしれないと感じる苦手な場所ができてしまった状態です。対象となる場所は患者様によってさまざまですし、複数の場所が苦手になってしまうケースもあります。
予後不安や広場恐怖は日常生活に支障を生じますし、発作が起こりそうな状況や場所が増えてしまって外出もままならなくなることも珍しくありません。また、抑うつ状態を合併しやすいため、パニック発作を起こしたら早めに専門医を受診して適切な治療を受けるようにしてください。

パニック障害の症状

こころの症状

  • 自分ではない感じがする
  • 自分ではない感じがする
  • 意識を失うような強い不安
  • 発作をまた起こすのではという予後不安
  • 発作を起こしそうな場所が怖くなる広場恐怖 など

身体症状

  • 動悸、心臓の音を強く感じる
  • 過呼吸
  • 理由なく突然起こる息切れや息苦しさ
  • のどの異物感、飲み込みにくさ、呼吸しにくさ
  • 胸を締めつけられるような痛み、不快感
  • 突然の腹痛や腹部の違和感
  • 吐き気・嘔吐
  • しびれや震え
  • 突然噴き出す汗や冷や汗
  • めまい・ふらつき
  • 気が遠くなる
  • 肩・首筋・背中などの強いこり
  • 頭痛 など

パニック発作を起こす状況

患者様によってさまざまですが、満員電車、飛行機、高速道路、エレベーターなどすぐに降りることができない乗り物、混雑しているレストラン、映画館、病院、そして誰もいない場所もパニック発作を起こしやすい傾向があります。こうした場所で上記の症状を起こした場合には、パニック発作が疑われます。
パニック障害は予期しない場所で起こりますので、場所などに関係なく突然パニック発作を起こすこともあります。最もリラックスできる自宅で就寝中にパニック発作を起こすこともあり、大きなストレスになりますので早めに受診してください。

パニック障害の治療

パニック障害の治療パニック発作自体は健康にほとんど影響しませんが、患者様にとって大きな苦痛・恐怖であり、パニック障害はさらに予期しない状況で起こるため大きなストレスになります。生活に多大な支障を生じやすいため、早期に専門医を受診することが重要です。
初診時には、ほとんどの方が治療やお薬に対しても不安を持ちやすい傾向がありますので、パニック発作やパニック障害について最初にくわしくご説明しています。パニック発作は特殊なものではなく100人に1~2人という頻度で生じますし、患者様の状態や症状にきめ細かく合わせた薬物療法や心理療法、生活や環境の改善などによって治療できる疾患です。気持ちの問題ではなく、脳内の情報を伝える役割を持った神経伝達物質のバランスなどによって生じていることもお伝えして、安心して治療を受けていただけるようにしています。わからないこと、ご不安がありましたら、些細なことでも遠慮せず医師にお伝えください。

薬物療法

抗うつ剤による治療が有効であり、パニック障害ではうつ病を合併しているケースや抑うつ状態の方が少なくないため、その意味でも効果的です。ただし、抗うつ剤は服用してから効果を現すまで数週間かかります。さらに薬に対する反応が過敏に起こる可能性があるため少量の処方からはじめる必要があります。そこで、治療開始には即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬の処方を併用することもあります。ただし、抗不安薬は効果が現れはじめたら慎重に処方を調整しながら減薬し、休薬する必要があります。状態に対応したきめ細かい処方の調整が必要ですから、医師の指示をしっかり守って服用してください。

心理療法

当院では薬物療法に加えて支持的精神療法、認知療法的アプローチ、行動療法的アプローチを行っています。いずれも患者様と対話を通じて、症状の改善につなげる療法です。お気持ちを理解・共感して支え、パニック発作を客観的にとらえる、苦手な状況・行動・場所などを見直して無理せずにできることから少しずつ克服するなどをサポートしています。より高度な心理療法を希望される場合は他の医療機関を紹介致しますので医師にご相談ください。

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