中核症状について

中核症状とは

認知症で生じる脳の神経細胞破壊によって直接起こる症状は中核症状と呼ばれます。程度などに差はありますが、認知症になると必ず現れる症状と理解するとわかりやすいと思います。

記憶障害

認知症で早期にも現れる代表的な症状で、いわゆる「もの忘れ」です。人やものの名前を思い出せない、電話を切ったばかりなのに相手の名前を思い出せないといった症状を起こします。

見当識障害

年月日、曜日、時間、季節、今いる場所などがわからなくなる状態です。身近な方の顔や名前がわからなくなることもあります。最初は遅刻、予約をした日を忘れる、ゴミの日がわからない、外気温に合わない服装をしてしまうなどを起こします。進行すると場所がわからなくなり、通い慣れた道で迷う、トイレの場所がわからなくなるなどを起こします。さらに進行すると人物がわからなくなり、自分の子どもや孫も誰だかわからなくなります。

理解力・判断力の障害

理解するのに時間がかかり、1度に複数のことができなくなります。あいまいな言葉や推測しないと意味が伝わらない言葉は伝わりにくくなりますので、具体的で単純な表現を使うようにしてあげましょう。また突発的なできごとや緊急事態に慌てやすいため、そういった際には落ち着いた口調で話しかけてください。

実行機能障害

遂行機能障害と呼ばれることもある症状で、論理的に考えて、計画通りに実行することが実行機能です。認知症では複数の家事を同時進行で行うことができなくなりますし、冷蔵庫を確認して足りないものを買いに行き、夕飯をつくるといったことも難しくなります。また想定外のことがあった際に単純な解決策を思いつけなくなります。

失語・失認・失行

脳の聞く・話す、書く・読むといった音声や文字に関わる部分が機能しなくなっている状態で、運動性失語(ブローカ失語)と感覚性失語(ウェルニッケ失語)に分けられます。ご本人は伝わらないもどかしさを感じているため、目を合わせて聞いていることがわかるようにすると安心します。

失語

運動性失語(ブローカ失語)

耳から入ってくる話は理解できますが、自分の言葉が出にくい、明瞭に話せない、言い間違うことが増え、文字を書くのも困難になるタイプの失語です。もどかしさやいらだちから話すこと自体に意欲をなくしてしまうことがあります。緊張させない態度や確認しながら会話を進めることで伝わりやすくなります。

感覚性失語(ウェルニッケ失語)

相手の話や書かれた文字の意味を理解することが困難になりますが、言葉をよどみなく話すことができます。意味のわからないことを言いますので、ものを指さす、ジェスチャー、短い単語、簡単な返事など、伝わりやすいことを重視した会話を心がけましょう。

失認

身体機能自体に問題はありませんが、感じている感覚の意味がわからない状態です。たとえば、視覚的に認識できない状態でも目の機能には問題がないケースでは、楽器を見ても認識できませんが、音色を聞けばバイオリンやピアノなどと認識できます。半側空間無視では、半分の空間にあるものを認識できないため、食事を半分残すなどを起こします。半側空間無視の場合、事故に遭いやすいため、外出には付き添いが必要です。

失行

動作を行う機能には問題がありませんし、行動する意思はありますが、日常的な動作を行えなくなっている状態です。身近な道具の使い方がわからない、自発的にはできることでも指示されるとできない、手先を起用に動かせないなどの症状を起こします。目印をつけるなどの対策が有効なこともあります。

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