強迫性障害

強迫性障害とは

強迫性障害の主な症状自分の意思に反して不合理な特定の思いや行為を繰り返してしまう疾患です。意思に反して特定の思いが繰り返し浮かぶ強迫観念と、特定の行為を繰り返してしまう強迫行為によって日常生活に支障を起こしている状態です。手荒れを起こすほど手を洗ってしまう、鍵やガス栓などが気になって何度も家に戻ってしまう、無意味なルーティン通りに行動しないと気がすまない、数など特定のものにこだわりすぎるなど、さまざまな症状があります。進行すると家から出られなくなってしまうこともありますし、抑うつ状態になりやすく、うつ病を合併することも珍しくありません。
強迫性障害は、WHO(世界保健機関)でも生活上の機能障害を引き起こす10大疾患に含めているほど、深刻な症状を起こしますが、神経質、きれい好き、慎重などの延長線上にある症状ですから、病気だと気付くのが遅れて進行させてしまい、日常生活に多大な支障を生じているケースも少なくありません。多くの疾患と同様に強迫性障害も早期に適切な治療を受けることで高い効果が見込めますが、治療が遅れるとそれだけ治すのに時間もかかりますし、生活への支障も大きくなります。ばかばかしいと思っているのについやってしまう、神経質で自分でも面倒になるなどに気付いたら、早めにいらしてください。

強迫性障害の原因

さまざまな要因が複合的に関与して発症するとされていますが、原因はまだはっきりとはわかっていません。以前は不安障害の中に含まれていましたが、現在では強迫性障害の悪化要因や症状が続くメカニズムがわかってきて不安障害とは別の疾患として考えられています。こうした研究の成果によって有効な治療法がわかってきており、適切な治療で改善できる病気になっています。

強迫性障害の主な症状

強迫観念から強迫行為を繰り返してしまう疾患であり、不合理とわかっていても特定の思いを振り払うことができず、それによって生じた不安によって無意味と思っていても特定の行為を繰り返してしまいます。強迫観念と強迫行為は片方だけ現れることもありますが、ほとんどの場合は両方生じます。代表的な症状を下記でご紹介していますが、他にもさまざまな症状を起こすことがあります。

不潔恐怖・洗浄行為

汚れや細菌・ウイルスなどへ不合理なほど強い恐怖を抱く不潔恐怖に、過剰な手洗い、入浴、洗濯などの洗浄の強迫行為を行ってしまう状態です。手洗いを繰り返して皮膚がボロボロになったり、他人が触れたものに触れられなくなって外出できなくなることもあります。

加害恐怖

実際には行っていないのに、自分が加害者になったという強い不安に苛まれます。ニュースを次々に確認せずにはいられず、関係者や警察に問い合わせてしまうこともあります。

確認行為

鍵やガス栓、スイッチやコンセントなどを執拗に確認してしまいます。指さし確認や手で触れて確認しても出かけると不安になって何度も家に戻ってしまい、遅刻を繰り返す、外出ができなくなる、見張り続けてしまうこともあります。

儀式行為

自分で決めた手順やルール、ルーティン通りに行動しないと強い不安を感じます。無意味とわかっていても繰り返さずにはいられないため、突発的な緊急事態が起こった時に危険な状態になる可能性があります。また、厳格に守れないと最初からやり直してしまい、出かけられなくなることもあります。

数字へのこだわり

数字へのこだわりラッキーナンバーや不吉な数字で縁起を担ぐという範疇を超えて、特定の数字に強くこだわることで、支障を生じます。生活にはあらゆる場面で数字が登場しますので、進行すると数に振り回されて生活にかなりの悪影響を及ぼします。

ものの配置、対称性などへのこだわり

テーブルの上、棚や引き出しの中、鞄の中などの配置に強くこだわり、こうでなければという配置から少しでもズレてしまうと強い不安を感じて直さずにはいられません。配置へのこだわりは、左右対称、片側に並べる、高さを揃えるなどのマイルールがあります。こうした強いこだわりに振り回されて、生活に支障を及ぼします。

強迫性障害の治療

強迫性障害という疾患について正しく理解して、ご自身の症状や生活における支障を認識し、必要な治療についての知識を持つことが重要です。当院では、医師が丁寧に患者様のお話をうかがって、わかりやすくご説明し、患者様のご質問にも丁寧にお答えしています。
薬物療法と心理療法による治療を行いますが、強いこだわりを完全になくすのではなく、日常生活への支障を解消することを目標に行います。難しい目標があるとそれがストレスになりますし、無理をしてかえって悪化させてしまうケースもありますので、まずはつらい症状を改善させることを優先させましょう。

薬物療法

強迫症状や抑うつ、強い不安感などの症状にきめ細かく合わせた処方を行います。抗うつ薬のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)は症状を緩和して安定した状態に導くために有効な薬剤ですが、服用をはじめてから効果が現れるまで数週間かかります。また、過敏に反応するケースもありますので、最初は少量の処方を行って経過を慎重に観察しながら適切な処方を見極める必要があります。うつ病の治療で使われるよりも薬の量が増えることが多いのですが、比較的副作用が少ないとされています。医師の指示通りに服用することが重要ですから、服用に関して気になること、不安がある場合には些細なことでも医師必ずお伝えください。

心理療法

当院では薬物療法に加えて支持的精神療法、認知療法的アプローチ、行動療法的アプローチを行っており、患者様と対話を通じて症状の改善をサポートしています。お気持ちを理解・共感して支え、強迫性障害を客観的にとらえる、強いこだわりについて見直して無理せずにできることから少しずつ克服するなどにつなげています。より高度な心理療法を希望される場合には他の医療機関を紹介しますので医師にご相談ください。

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