認知症の予防について

認知症の予防について

認知症はその方の自己認識に関わる記憶や思考、判断力、理解力が低下していく病気であり、クオリティ・オブ・ライフを大きく損ねるだけでなく、さまざまな支障を生じます。認知症を治す薬は世界中で研究が行われていますが、まだ完成していません。こうした状況から現在では、認知症の効果的な予防を行うことが重要になっています。
メディアなどでも認知症予防が紹介されることもありますが、インパクトを重視したものも多く、効果が疑わしいものも入っています。

当院の院長は専門医として認知症治療の長い経験を重ねてきた中で、認知症の予防医療についての正しい情報をお伝えする必要性を実感してきました。当院のコンセプトは、こころの問題を地域の方が専門医に気軽に相談できるクリニックでありたいというものです。そして、認知症の予防医療についてもしっかり取り組むことで、地域の方が長く快適に暮らせるようサポートすることも当院の重要な役割だと考えています。

適切な予防や治療は認知症でも重要です。そして、認知症の予防は認知に問題のない健常加齢の時期にスタートさせることで最も高い効果を期待できます。また、認知症の予備群である軽度認知障害(MCI)を早期に発見して適切な治療を行うことで、認知症の発症を遅らせることが期待できます。そして認知症になってからもやはり適切な治療により症状をやわらげて進行を遅らせることができます。

健常加齢では認知機能低下予防を、軽度認知障害(MCI)では認知症へ伸展させないための予防を、そして認知症になってからは認知機能や生活機能の進行予防を行います。段階ごとに目標が変わりますので、効果的な予防を行うためにはこうした変化についてしっかり知っておくことが重要です。

予防で特に研究が進んでいるのは軽度認知障害(MCI)から認知症への進展の予防です。そして、世界中で行われてきた認知症予防研究では、どの段階であっても効果があると多くの研究機関から認められているものに運動習慣と高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病の予防や治療があります。これ以外の方法は限定的な状態で有効なケースもあるという程度のことがほとんどを占めます。また、健康情報や広告の表現はよく読んでみると確かな効果をうたっているのではないこともよくあります。

認知症予防で重要なのは、行うこと自体がストレスになってはいけないということです。状態に合わないことを無理に行っても効果が見込めないだけでなく、できない・続かないことで気分の落ち込みにつながることもあります。また、いくら習慣的な運動が有効だとしても、体力的な問題があって1か月程度しか行えなかったとしたら意味がありません。さらに膝や腰を痛めてしまうなどのリスクも考慮しなければいけません。

当院では経験豊富な認知症専門医が患者様の状態やリスクに合わせたきめ細かい予防のアドバイスを行っています。具体的なプランを患者様ごとにお作りしますので、お気軽にご相談ください。自費診療となりますが、より専門的な見地からカウンセリングを設けさせて頂きます。

予防のポイント

1.生活習慣病の予防・治療

認知症は、世界中で行われている多くの研究によって生活習慣病やそれによって進行する動脈硬化との深い関連が指摘されています。動脈硬化が進行して生じる脳卒中は脳血管性認知症の直接的な原因ですし、アルツハイマー型認知症の発症や進行にも生活習慣病が大きく関わっています。高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、内臓脂肪型肥満、動脈硬化といった生活習慣病を予防し、すでに発症している場合には適切な治療で良好な状態にコントロールしましょう。

2.習慣的な運動

生活習慣病予防や健康維持のためにも運動が重要ですが、脳の機能を活性化させるためにも運動は有効です。体の動きは脳がコントロールしていますし、動くことで脳を適度に刺激することにもなります。また習慣的に運動することで血行が改善しますし、筋肉が強化されて基礎代謝が上がり、健康に良い影響を与えます。
ただし、膝や腰などに整形外科的な問題がある場合にはできるだけ早めにしっかり治療を受けて治しておくことも重要です。整形外科疾患があると痛みや動きの制限が起こって、可能な運動も少なくなりますし、行動範囲が極端に狭くなって認知機能が急激に悪化することがあります。また女性は年齢を重ねると骨粗鬆症の発症リスクが上昇しますが、カルシウムやビタミンD・Kをしっかりとって適切な運動を続けることで骨も強化されます。

3.達成感・成功体験

なにかを行う際に、モチベーションを持ち続けることは案外難しいものです。認知症予防でも、記録を残す、作品をつくるといった目に見える成果が確認できるよう工夫することで達成感や成功体験を得られ、楽しく続けるモチベーションになります。

4.他人との交流

コミュニケーションは脳を刺激します。親しい方との会話はもちろん、知らない方と会話することも新鮮な刺激となって生活を豊かにします。趣味を通じた共同作業、作品の披露や発表など気持ちが浮き立つ場をつくることも有効です。

5.無理なく続けられる

ご本人が無理なく続けることができ、ご家族にも余計な負担がない予防法であることはなによりも重要です。遠方まで行かなければできないことや、材料が高価な内容では続けられませんし、どこかにストレスがかかってしまいます。また、予防として行うことは特に認知症予防に有効とされるものである必要はありません。ご本人が大好きな趣味や楽しく続けられるものであれば、麻雀、家庭菜園、写真撮影などどんなものでも構いません。ご本人がやりたいと思うことを続けられる環境を整えることが、認知症予防につながります。

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