社会不安障害(全般的不安障害)

全般性不安障害と社交不安障害(社会不安障害)

全般性不安障害と社交不安障害(社会不安障害)不安障害は、過度な不安から社会生活に支障を生じている状態のことであり、不安の原因が特定できないケースは全般性不安障害と呼ばれます。社交不安障害(社会不安障害)は、対人関係の場面で過度な不安を起こすケースです。

社交不安障害(社会不安障害)とは

あがり症や赤面症など、性格の問題と誤解されていた不安障害で、人前に出ると強い不安を感じますが、適切な治療で回復できる疾患です。日本社会では同調圧力が強いため、空気を読まなければと言うプレッシャーが強く、社交不安障害を発症する方が少なくありません。不安障害の中では最も多く、こころの病気全体でも発症頻度は3位に入っています。
思春期に発症することが多く、本来の能力や才能があっても実力を発揮できず、進学・就職・結婚など人生の重要な転機でつまずいてしまう可能性がありますし、悪化して外出ができなくなり引きこもりになることもあります。早めに専門医を受診するようおすすめしています。
社交不安障害は適切な治療によってクオリティ・オブ・ライフを大幅に向上できる疾患です。本来の実力を発揮するためにも、気になる症状がありましたら気軽にご相談ください。

社交不安障害の主な症状

社交不安障害の主な症状人前に立つことで極端な不安を感じ、苦痛、動悸、声や手の震え、赤面、意識が遠のく、大量の汗をかく、立っていられないなどの症状を起こします。スピーチ・プレゼン・発表、電話、会食、人前で文字を書く、初対面の人に話しかけるなど、対人関係のさまざまなシチュエーションで症状を起こします。
強い不安を起こすことで苦手な場面が増え、苦手意識が強くなると外出が億劫になって日常生活に支障を生じ、外出できなくなることもあります。内気、シャイなタイプは発症しやすい傾向がありますが、外交的なタイプがなにかをきっかけに発症することもあります。人前が苦手という意識があって、生活などに支障を感じているようでしたら早めにご相談ください。

早期の受診をおすすめしています

性格の問題とされてきた経緯があり、適切な治療を受けていない方も多い疾患ですが、対人関係に強い不安があって日常生活に支障を生じている場合には早めの受診をおすすめしています。社交不安障害は専門医による適切な薬物療法や心理療法によって改善できる病気ですし、本来の才能や能力を発揮してクオリティ・オブ・ライフを向上するためにも治療が役立ちます。近年の研究では、専門医による適切な治療を1年間続けることで90%以上の方が回復すると指摘されていますし、どんな病気でも同じですが社交不安障害も早期の治療で高い効果が期待できます。当院は地域の方がこころの問題を気軽に相談できるクリニックですし、専門医が親身で丁寧な治療を行っています。「もしかしたら」と思ったら、早めにいらしてください。

社交不安障害の原因

セロトニンなど脳内の神経伝達物質のバランスの乱れ、環境の変化、気質、これまでの経験、周囲からのプレッシャーなど、複数の要因が関与して発症していると考えられています。

脳内神経伝達物質

感情の安定、意欲などに関与するセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質は、バランスが乱れると刺激への反応が過敏になり、不安や恐怖、緊張などのストレスを強く感じるようになってしまいます。

気質

シャイ、内気、まじめ、自分に厳しいタイプは社交不安障害を発症しやすい傾向があります。学校や職場ではなく、家庭環境の影響が発症に関与することもあります。しつけが厳しいという抑圧だけでなく、愛情深く育てられたことで他人から厳しい評価をはじめて受けて発症することもあります。また、心的外傷になる出来事をきっかけに、それまで外交的だった方が発症するケースも存在します。

社交不安障害の治療

過剰な恐怖や不安を取り除き、そうした状況をつい避けてしまう行動を無理のない範囲で少しずつ克服できるようにサポートします。クオリティ・オブ・ライフを向上させ、良い状態を維持することを目標として、適切な薬物療法や心理療法、生活習慣や環境の改善などを主に行います。当院では専門医による診断と治療に加え、臨床心理士による認知行動療法をはじめとした心理療法を行っています。社交不安障害についてくわしくご説明し、使われる薬剤や治療方法についても具体的にお伝えして、患者様と相談しながら治療方針を立てていますので、気になることがありましたら些細なことでも遠慮せず医師へお伝えください。

薬物療法

不安に関与するセロトニンの分泌を調整するSSRI、セロトニンとノルアドレナリンの分泌を調整するSNRI、抗不安薬、血圧や心拍数を抑えるβ遮断薬などから適切なものを組み合わせて処方しています。薬剤の効果には個人差がありますし、飲み合わせなどにも十分留意して、慎重に処方を行っています。服薬していて気になることがありましたら、より良い処方につなげるためにも必ず医師にお伝えください。

心理療法

薬物療法に加えて認知行動療法的なアプローチなどを行います。対話を通じて症状が起こる状況について客観的にとらえられるようになり、思考や感情の癖や偏り、ゆがみを発見・理解して感情をコントロールできるようにして、無理のない範囲で少しずつ克服できるようサポートしていきます。

社交不安障害の予後

早期の治療では治しやすいのですが、社交不安障害は進行しやすい疾患であり重症化してしまうと治療効果を得にくくなってしまいます。もちろん治療は可能ですが、時間をかけて少しずつ改善していく地道な治療が必要になります。また、慢性化している場合、うつ病、アルコールや薬物の依存を起こしやすい傾向があります。

社交不安障害は、本来の才能や能力を発揮できず、人生の大事なターニングポイントをうまく超えられずにクオリティ・オブ・ライフを大きく左右してしまうことがあります。

できるだけ早く適切な治療を受け、症状が改善してきたら、少しずつこれまで苦手だったことに挑戦することも役立ちます。話し方といったコミュニケーション能力、歌や踊りなどの自己表現などのスキルを身に付けることも有効なケースがあります。
そして重要なのは、人前で緊張を感じたり、新しいことに気後れや不安を感じるのは人間として当然の反応であり、恥ずかしいことではありませんし、程度によってはそれが対人関係や危険回避に良い効果をもたらすこともあると理解することです。人前での緊張で生活に支障が及んでいると感じたら、お気軽にご相談ください。

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